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広島地方裁判所 昭和35年(行)23号 判決 1961年10月03日

原告 八杉正夫

被告 福山市長

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

原告は、「被告が昭和三五年八月三〇日福山市御門町字御裏門一五三八番地の三、宅地一五九坪に対してなした参加差押処分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として

一、被告は、昭和三五年八月三〇日原告に対する昭和三〇年度から昭和三四年度までの各第一、二、三、四期分、昭和三五年度第一、二期分の固定資産税、昭和三〇年度から昭和三四年度までの水利地益税、昭和三〇年度、昭和三二年度の各第一、二、三、四期分、昭和三三年度から昭和三五年度までの各第一期分の住民税、昭和三一年度、昭和三二年度の自転車税合計一〇三、〇〇三円、およびこれに対する督促手数料、延滞金、延滞加算金の滞納処分として請求の趣旨記載の原告所有不動産に対し参加差押をした。

二、右参加差押の基本たる税金債権の内、昭和三〇年度固定資産税第一期分二、〇九〇円、同第二期分二、〇八三円、同年度住民税第一期分六、七〇三円、合計一〇、八七三円については時効により消滅している。

三、従つて前記被告のなした参加差押処分は違法であるから、原告は、昭和三五年九月二八日被告に対して異議の申立をしたところ、被告は昭和三五年一〇月五日右の異議を却下する旨の決定をしたので、原告は右参加差押処分の取消を求める為本訴に及ぶ。

と述べ、被告の主張事実中、時効中断の点を否認すると述べ、乙号各証の成立を認めた。

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張の本訴請求原因事実中、第一項は認める、第二項中原告が時効消滅を主張する各税金が本件被告のなした参加差押の基本税金債権に含まれることは認めるが、その余の部分は否認する、第三項中原告主張の各日時、原告が被告に対して異議の申立をし、被告が右異議を却下する旨の決定をしたことは認めるが、その余の点は否認する。

原告主張の各税金については、その最終納期(最も早いもので昭和三〇年五月三一日)より五年以内である昭和三五年四月一九日付で他の税金滞納分と共に差押事前通知書を原告宛に送付催告して居り、同月二七日徴税吏員二名が原告宅を訪問して再度催告し、その後同年八月三〇日本件参加差押をしているから地方税法一八条三項で準用する民法一五三条により時効は中断している。

仮りに原告主張の税金債権が時効によつて消滅したとしても本件参加差押の基本債権は原告主張の通り昭和三〇年度ないし昭和三五年度固定資産税、昭和三〇年度ないし昭和三四年度水利地益税、昭和三〇年度ないし昭和三五年度住民税、昭和三一年度、三二年度自転車税、合計一〇三、〇〇三円及び督促手数料、延滞金、延滞加算金であつて、原告の時効消滅を主張する以外の各滞納税金が残存する以上本件参加差押処分が違法となる理由はなく、原告の請求は失当である、と述べ

立証として乙第一号証、第二ないし第四号証の各一、二、第五号証を提出した。

理由

原告がその主張の昭和三〇年度ないし昭和三五年度の固定資産税、昭和三〇年度ないし昭和三四年度の水利地益税、昭和三〇年度ないし昭和三五年度の住民税、昭和三一年度、三二年度の自転車税の合計一〇三、〇〇三円を滞納し、被告がその徴収の為昭和三五年八月三〇日原告主張の物件に対し参加差押をしたこと、原告主張の各日時、原告が被告に対して異議の申立をし被告が右異議を却下する旨の決定をしたことは本件当事者間に争がない。

原告は右滞納税金中昭和三〇年度固定資産税第一期分、第二期分、同年度住民税第一期分、合計一〇、八七三円については既に消滅時効が完成しているから、これにもとづく参加差押は違法で、この差押処分は取消さるべきであると主張するが、仮りに右原告主張の各税金債権が時効によつて消滅したとしても右は前記被告のなした参加差押の基本税金債権の一部に止まり、これを控除するも猶滞納税金九万余円が残存することは明かである。従つて本件参加差押は右残存債権の為には依然有効に存在しているものであつて、右の差押処分が違法のものとなるものではない。

然らば、他に何等の主張のない本件参加差押処分の取消を求める原告の本訴請求は爾余の点について判断をなすまでもなく失当たること明かであるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 原田博司 浜田治 長谷喜仁)

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